空をみて

ここは歩いたことがないなと、約束の時間まで少し歩いてみた。歩道の固いコンクリートに囲まれた中には桃色の可愛い桜が咲いていた。一方排気ガスを吸った粗い塀が立っていて、こういう劣化も面白いなと少しずつ視線を下ろしていくと所どころにたんぽぽの葉が地面と塀の角に咲いていた。風の吹きどまり種が僅かな土に根を伸ばしたのかと深緑でいて少し汚れた葉っぱたち、厚みとカクカクした形が花はないが見ればみるほど存在感が増してきてレンズを向けていた。地面に姿勢よく座っているよう、こうかこうかと角度を変えてみる。

「良いもの撮れますか?」と女性が見ている先を覗き込んだ。「あぁたんぽぽですね。この辺はたくさんありますね。」と言い「そうなんですね、あの樹の下には多分西洋たんぽぽたくさん咲いているんですけれど、この葉っぱがおもしろいと思って..」と返し二人で眺めた。少しして「お邪魔したね。」「いえ、どうぞお気をつけて」と互いに笑みを浮かべて少し見送った。70歳前後、少し曲がった背中に赤ピンクのリュックの口は大きく破れていて、その女性の目は欲を越した穏かな目、歩みはゆっくり。

求めているもの、ささやかな光のような風のようなちょっとした水のような一時だった。

  桜は見事だ。

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